結局、何ができるの?

こんにちは。
毛利まさるです。

「で、結局、何ができるの?」

この言葉をお客様から投げかけられた経験はありませんか?

一生懸命に自社の強みを伝えたはずなのに、
提案の魅力がうまく届かず、最後にこう聞き返されてしまう
セールスとしては、非常にショックな瞬間かもしれません。

残念ながら、はっきり申し上げますと
この質問をされるということは、
相手の課題をまだ掘り当てられていない証拠です。

セールスとは、本来「商品を売ること」ではなく、
「相手の困りごとを解決すること」です。

相手が本当に困っていることを引き出し、
それに対して「では、こうしましょう」と解決策を提示する。
それができていれば、「何ができるのか?」
とあらためて聞かれることはほとんどありません。

このようなズレが起こる原因は、
ヒアリング不足にあります。

商品やサービスの説明に一生懸命になりすぎて、
相手の言葉を丁寧に拾うことをおろそかにしていないでしょうか。

私たちはつい、
「自分たちの強みをわかってもらおう」とするあまり、
説明の主導権を握ろうとします。

しかし、そこに相手の現実や課題が見えていなければ、
どれだけ魅力的な提案をしたところで響かないのです。

本当に相手が知りたいのは、
「この会社は、私のこの問題をどう解決してくれるのか?」
という一点だけです。

ですから、まず必要なのは
「あなたの現場では、いま何が起こっているのか?」
を深く聞くこと。
そして、その言葉の裏側にある本音や不安まで見抜こうとする姿勢です。

たとえば、「今、人が足りない」と言っている背景には、
「既存の人材のスキルにバラつきがある」
「急な離職が増えている」など、
表面には出てこない課題が潜んでいるかもしれません。

それを聞き出せなければ、
「研修サービスを提供できます」
といった一般的な提案になってしまい、
「で、何ができるの?」と返されてしまうのです。

一方で、相手の状況を深く理解できれば、
解決のアプローチも具体的に提案できるようになります。
「離職率の上昇が懸念されているのであれば、
 まず既存社員のコンディションを見える化するための
 ステップをご提案します」
といった形で、相手の現実に沿った一歩目を提示できる。

すると、商談の流れは大きく変わり、
「お願いできるかもしれない」という確信に変わっていくのです。

セールスという仕事において、
自分の話をいかに上手に伝えるかよりも、
相手の話をいかに深く聴けるかが成否を分けるカギとなります。

会話の主導権を握るのは、セールスパーソンではなく常に顧客です。
だからこそ、先回りして話すのではなく、
「そう思われた背景には、どんなご事情があるのでしょう?」
と問いかける姿勢が必要です

ヒアリングとは、情報収集ではなく信頼構築の手段です。
「この人は、私のことをちゃんと見ようとしている」
と思ってもらえたとき、初めて相手は本音を語り始めてくれます。

そして本音を語ってもらえたときこそ、
私たちは「何ができるか」を、相手の言葉で語れるようになるのです。

「結局、何ができるの?」という質問が来たときは、
自分の話し方を見直す前に、
自分の聴き方を見直すタイミングなのかもしれません。