
こんにちは。
毛利まさるです。
料理人が「今の味」と「完成形」を比べられる理由
料理人はまかない料理を作っている最中でも、
「あ、この味なら少し塩を足した方がいいな」「酸味が弱いからレモンを入れよう」といった調整を自然に行います。
ただ感覚でやっているように見えて、実は頭の中では常に“完成形の味”をイメージし、それと“現時点の味”を比較しています。
その比較によって、甘味や酸味、苦味、塩味、うま味といった味の要素のどれが不足しているのかを判断し、それに応じて調味料を加える。
つまり料理人は、完成形と現在地を同時に把握しながら、ズレを埋めるように味を整えているのです。
この能力が自然に発揮できるのは、経験値や知識が積み重なっているからであり、
数多くの成功と失敗の蓄積によって“判断基準”が体に染みついているからです。
しかし、この構造は料理だけに限ったものではありません。
実はセールスの世界にもまったく同じ原理が存在します。
セールスも“完成形”と“現在地”の比較で成果が決まる
営業が成果を上げるためには、まず「今どの位置にいるのか?」を把握しなければなりません。
料理人が現在の味を確かめるように、セールスも自分の状況を冷静に観察する必要があるのです。
たとえば商談の準備が甘いときには「顧客理解という塩味が足りない」と感じることがあります。
提案が刺さらないのなら「顧客の感情に寄り添う甘味が不足している」と自覚できるかもしれません。
あるいは競合との差別化が弱いのであれば「酸味というアクセントが足りない」という視点で調整ができます。
こうした“味の要素”のズレを把握し、それに応じた補正を行うことができたとき、営業は自然と成果を出しやすくなります。
この思考はまさに、料理人が鍋の味を見ながら微調整していくプロセスそのものです。
セールス現場における「味の調整」とは何か
では、それを営業活動に落とし込むと何が“調整”に当たるのでしょうか。
料理であれば塩や砂糖を足すように、セールスでは情報量、資料、シナリオ、質問の質、ヒアリングの深さ、感情の寄り添い方といった要素を微調整していきます。
顧客が求めているものと、あなたが今提供しているものの間にあるギャップを埋めていく作業です。
顧客の反応が硬いのであれば、話し方のトーンを柔らかくすることで“甘味”を増やす。
結論ばかり先行して伝わりにくいなら、“うま味”となる事例や背景説明を加える。
競合と比較されて迷われているなら、“酸味”として他社との違いを際立たせる。
このように、営業活動は実は「味の調整」に非常に近い構造を持っています。
そしてその調整は、知識と経験が積み重なるほどに正確になり、ズレの幅も小さくなっていきます。
売れる営業は“鍋の味”を確かめ続けている
優秀な営業ほど、商談の最中でも頭の中で常に“味見”をしています。
顧客の表情や言葉の選び方を見て、今の提案がどの程度伝わっているのかを判断し、必要に応じて軌道修正を行う。
その判断力は魔法ではなく、料理人と同じように経験と知識から生まれるものです。
成果が出る営業というのは、最初から正しい味が作れるわけではなく、むしろ改善の連続によって味を最適化しています。
完成形をイメージし、それと現状を見比べ、その差分を埋める“調整力”こそが営業の核心です。
料理人が鍋の味をひと口確かめるように、営業もまた、顧客の反応をひとつひとつ確かめながら進むことで、成果は自然と積み上がっていきます。
料理も営業も、成果を生むのは“調整する力”
料理人が味を調えるように、営業もまた、自分の提案やコミュニケーションを状況に応じて補正していくことで成果が上がります。
現在地を把握し、目指すべき完成形を描き、そこに向けて微調整を続ける。
その積み重ねが営業の腕を磨いていくのです。
経験と知識に基づく“味の調整”。
それは料理だけに許された職人技ではなく、セールスで成果を出すための思考法そのものなのです。





