
こんにちは。
毛利まさるです。
礼が欠けた職場で生まれる小さな違和感
組織で働いていると、「手続きとしては間違っていないが、人としては違和感がある」という出来事に出会うことがあります。
それは大きな事故ではなく、日常のほんの一瞬に潜んでいます。
ある日、とあるシステムのアカウント削除の対応が行われました。
運用としては規定に沿っており、形式だけを見れば何の問題もないと判断できるものでした。
しかし実際には、当事者の一番のヘビーユーザーである田中さんに対して連絡は行われず、
田中さんは使おうとした時に突然「利用できなくなった」と知ることになりました。
この事例は極端かもしれませんけど、あなたも似たような経験をしてきたのではないでしょうか?
規則上は正しいのに、どこか心がざらつく瞬間。
その結果、組織への信頼や心理的安全性が目に見えないところで削られていくのだと思います。
ここで重要なのは、「規則がどうか」ではなく、「人の心がどう動くか」であるという点です。
合理性だけでは組織は整わない理由
システム運用は効率化され、規則は明確に定められています。
手続きとしては完璧なはずなのに、なぜ違和感が生まれるのでしょうか。
それは“礼”が欠けているからです。
礼とは、相手を尊重する姿勢であり、形式ではなく心の動きを理解しようとする態度です。
相手の状況を想像し、たったひと言の連絡を入れること。
ほんの数秒の手間を惜しまないこと。
それだけで、受け手の感情や信頼は大きく変わります。
逆に言うと、どれだけ合理的な運用であっても、そこに礼がなければ、組織は冷たく写り、誰かを不必要に傷つけるのです。
田中さんが感じた驚きや戸惑いは、決して“細かい話”ではありません。
「自分は大事にされていないのではないか?」という感覚は、組織から人を遠ざける十分な理由になりえます。
礼が失われた環境で本当にすべきこと
では、礼が失われた場面に出会った時、私たちは何をすべきなのでしょうか。
怒りをぶつけることでも、相手に説教をすることでもありません。
それではただ摩擦が増え、互いの心が離れるだけです。
必要なのは、礼が欠けていた事実を静かに受け止め、自分がその“礼”を体現する側に回ることです。
たとえば、もし自分が田中さんの立場ならどう感じるのかを想像すること。
次に同じような場面があれば、事前にひと言添える行動を選ぶこと。
それだけで、組織に小さな“温度”が戻ってきます。
人の心は合理性だけでは動きません。
たった一通の連絡、たった一言の説明、たった一瞬の配慮。
その小さな積み重ねこそが、組織の信頼と文化を支えていくのです。
結局のところ、礼とは「相手を人として扱う」ということ
規則は組織を守るために存在します。
しかし礼は、人の心を守るために存在します。
どちらか一方でよいのではなく、両者がそろってはじめて健全な組織が成り立ちます。
今回のようなアカウント削除の出来事は、表面的には些細であるものの、
「心を軽視した運用は誰かを確実に傷つける」という事実を教えてくれます。
そして、礼が欠けた場面に出会ったときにすべき唯一の行動とは、自分が礼を示す側に回ることなのです。
静かに、淡々と、しかし確実に。それが組織を変える一番の近道なのです。





