お客さんが面倒と感じる意思決定

こんにちは。
毛利まさるです。

新しいツールやサービスを提案されたとき、
「今のソフトでも業務は回っている」
「覚えるのが正直、面倒だ」
「価格に見合う価値があるのかわからない」

そんな感覚を持ったことは、一度や二度ではないはずです。

その結果、検討は止まり、結局いつもと同じ選択をしていたと思います。
それは怠慢でも判断ミスでもありません。

人は誰しも、意思決定のときに“比較の土台”を無意識に設定しているからです。

なぜ「面倒だ」が意思決定を止めてしまうのか

顧客が「面倒だ(コスト)」と感じている状態では、比較の土台はとても狭くなっています。
具体的には「機能 vs 価格」「今のやり方 vs 新しいやり方」といった、プロダクト・データの世界だけで判断している状態です。

この土台では、どうしても現状維持が有利になります。
今使っているソフトはすでに慣れている。
追加の学習コストもない。
多少の不便はあるものの、致命的ではない。

そのため、比較は均衡状態に入り、最後は「面倒さ」が勝ちます。

おわかりでしょうか。

ここでは、どれだけ機能を説明しても、どれだけ価格の妥当性を語っても、意思決定は動きません。

営業の役割は「説得」ではなく「土台の移動」である

多くの営業がやってしまいがちなのは、
この狭い土台のまま、機能説明や費用対効果の話を重ねることです。

しかし、それでは比較の前提が変わらない。
前提が変わらなければ、結論も変わりません。
営業の本当の仕事は、顧客の比較の土台そのものを移し替えることです。

プロダクト・データの世界から、マーケット・データの世界へ。
機能の話から、構造の話へ。
今の便利さから、将来のリスクへ。

新しい比較の土台──グローバル・ペインという視点

比較の土台を広げるとはどういうことか。
それは「このまま何もしなかった場合に起きる、避けられない未来」を示すことです。

たとえば、業界全体ではデジタル化が進み、競合は意思決定スピードを上げている。
データ活用の差が、そのまま市場シェアの差になりつつある。
このやり方を続けると、3年後には市場シェアの30%を失うリスクがある。

ここまで視野が広がったとき、顧客の頭の中で起きている比較は一変します。

「導入が面倒かどうか」ではなく、「何もしないリスクを取れるのか」という比較に変わるのです。

メリットが勝つのではなく、リスク回避が圧倒する状態

この新しい土台では、面倒さは消えません。

導入は相変わらず手間ですし、学習コストも存在します。
であるものの、それはもはや主役ではありません。

主役になるのは、
「取り残されるリスク」
「競争力を失う可能性」
「静かに衰退していく未来」です。

その結果、意思決定は自然に前に進みます。
押し切る必要もありません。

クロージングは押し切ることではない、という言葉の意味が、ここで初めて生きてきます。

比較の土台を変えた人だけが、未来を選べる

経営学者のピーター・ドラッカ氏はこう言いました。

最も重要なことは、正しい答えを出すことではなく、正しい問いを立てることである

ピーター・ファーディナンド・ドラッカー

営業では、答えを教える前に顧客がどの土台で比較すべきか、その問いを設定してください。
比較の土台が変われば、判断は変わります。
判断が変われば、行動が変わります。

そして、行動が変わった人だけが、未来を選べるのです。