
こんにちは。
毛利まさるです。
大人になると、子どもの頃に苦手だった苦いものや辛いものが急においしく感じられる瞬間があります。
コーヒー、ビール、ワイン、ブラックチョコレート、辛口カレー。
若い頃は顔をしかめて飲み込んでいたのに、ある日を境に「あれ、意外といける」「むしろクセになる」と感じる。
あなたもこうした経験があったのではないでしょうか?
実は味覚の変化は、単に年齢を重ねたからではありません。
脳が「これは良い時間だ」と学習した結果、苦味の感じ方そのものが“書き換わっていく”のです。
この仕組みは、営業やマーケティングの本質と深くつながっています。
苦味が「心地よさの記号」に変わるメカニズム
苦味や辛味は、そもそも人間の本能的な感覚では“危険信号”です。
毒を連想させるため、子どもの頃は拒否反応が強く出ます。
しかし大人になると、その苦味がなぜかおいしく感じられるようになる。
これは脳が経験と結びつけて評価を上書きしているからです。
たとえば、コーヒーを飲みながら誰かと楽しい会話をしたり、仕事終わりの一杯でビールを流し込んだり、
頑張った日のご褒美に少しビターなチョコを食べたりすると、脳はその苦味にポジティブなラベルを貼りま「この味=癒しの時間」「この苦味=達成感の象徴」といった具合に、感情と味の記憶が密接につながっていくのです。
すると同じ苦さを感じても、「うっ」と思うどころか「この苦味がたまらない」「この辛さこそ旨い」と評価が反転します。
脳内の“文脈づけ”が変化した瞬間です。
経験が広がるほど「苦味の解像度」は高まる
さらに大人になると、さまざまな種類の苦味に触れます。
コーヒーの苦味とワインの渋みは違うし、ビールのキレとブラックチョコの深みもまったく別物です。
経験が増えるほど、苦味を「一括り」に感じなくなり、より細かい違いがわかるようになります。
これはまさに“解像度が上がる”という状態です。
細部に気づけるようになるほど、「深みがある」「余韻が長い」「この苦味は良質だ」といった評価ができるようになる。
味覚は経験によって熟成されていきます。
味覚の仕組みは、そのまま営業に応用できる
ここからが重要です。
この“脳の書き換え”の仕組みは、ビジネスや営業コミュニケーションにもそのまま応用できます。
営業が苦手な新人が、ある日突然営業を好きになることはありません。
営業という行為そのものに、ポジティブな意味づけが必要だからです。
成果が出た瞬間、顧客と深く話せた体験、誰かに「ありがとう」と言われた時間。
こうした経験の積み重ねが、営業という仕事に「心地よさのラベル」を貼っていきます。
すると以前なら避けたかったアポイントも、自然と前向きに感じられるようになる。
資料作成も、クロージングも、やがて“苦いコーヒーのように癖になる”のです。
「苦味がわかる大人」は営業でも成長が早い
味覚の変化は、脳の学習と経験の成果です。
そして営業の成長も、同じ構造を持っています。
最初は苦味を拒む。
しかし少しずつ付き合っていくと、ある瞬間から「これは心地よい」と感じられるようになる。
そして経験の幅が増えるほど、より深い味わいに気づけるようになる。
営業スキルも同じで、最初の苦さを乗り越えた人だけが、仕事の本当のおもしろさにたどり着けます。
苦味を楽しめるようになったら、営業の才能が開く
もしあなたが最近、「営業って意外と悪くないな」とほんの少しでも感じた瞬間があるのなら、それは才能が開き始めているサインです。
脳があなたの経験を通して、営業を“心地よさの時間”として書き換え始めている証拠だからです。
苦いコーヒーが好きになったように、営業も経験を通しておいしくなる。
経験が増えるほど、解像度が上がり、価値がわかり、成果につながる。
味覚の科学は、営業の本質を静かに語っています。
「苦味をおいしいと感じた瞬間から、人は成長する」のです。





