
こんにちは。
毛利まさるです。
疑われるのは当然という前提から始める
相手に何かを提案するとき、あなたは「これは本当に良い提案だ」と自信を持っているかもしれません。
しかし相手は必ずと言っていいほど、「それはわかるけど、本当にそんな良いことばかりなの?」という視点で聞いてきます。
この反応には深い悪意も偏見もありません。
人間は誰しも、自分を守るために“リスクを探す”という防衛本能を持っているからです。
企画を伝えても、商品を紹介しても、相手は必ず何かしらのデメリットを探そうとします。
その結果、こちらが一方的にメリットだけを伝えれば伝えるほど、
相手の心の中では「都合の良いことしか言っていないのでは?」という警戒心が高まっていくのです。
最初にデメリットを伝えることが信頼を生む理由
メリットばかりを強調してしまうと、聞き手の中で“隠されたリスク”を探す意識が働きます。
おわかりでしょうか?
この瞬間、相手の頭はあなたの話を純粋に受け取るモードではなく、疑いながら聴く“反証探索モード”になってしまうのです。
しかし、もしあなたが先にデメリットを提示したとしたら状況は一変します。
「この企画にはこういう弱点があります」
「この商品にも改善点があります」
と最初に伝えられた瞬間、相手の警戒心は大きくゆるみます。
あなたが主導して弱点を言語化したことで、相手は“探す必要がなくなる”からです。
その結果、「正直に伝えてくれている」という印象が生まれ、話の信頼度が一段階上がります。
これは心理学的にもよく知られた効果で、弱点を最初に示すことで全体の説得力が高まる現象です。
ですので、デメリットを先に伝えることは、実はもっとも効率的に信頼を獲得するコミュニケーションなのです。
会社への企画ほど“デメリット提示”が必須になる理由
特に会社内での企画提案では、この姿勢がなおさら重要になります。
上司や経営層は、過去の失敗や予算管理の経験からリスクに敏感です。
そのため“良い面だけを並べた企画”は、むしろ不自然に映ってしまいます。
たとえば、企画書に魅力的な成果だけを強調しても
「逆にリスクが見えていないのでは?」
「最悪のケースを考えていないのでは?」という不安をもたらしてしまいます。
しかしこちらが「想定されるリスク」
「そのリスクが起きた場合の対処」「デメリットを踏まえてもなお実施すべき理由」
を明確にしておけば、企画の全体像は一気に信頼されるものになります。
デメリットを隠すのは不誠実だからではありません。
デメリットを伝えないと本質的な議論が始まらないからです。
相手が本当に知りたいのは、良い話よりも“悪い話をどう処理しているのか”という部分なのです。
デメリット提示は「弱みを見せること」ではなく「主導権を握ること」
デメリットを伝えるという行為は、自分の弱みをさらけ出すことではありません。
むしろ、話の主導権を握るための戦略です。
相手から指摘されて受け身になるのではなく、自分から語ることで議論の流れをコントロールできるからです。
「デメリットはこれです。ただし、このデメリットはこういう理由で許容できます」
「ここに弱点があります。ただ、そのリスクはこの手順で最小化できます」
このように“弱みを説明しながら強みを強化する流れ”をつくれば、あなたの提案は立体的になり、相手の理解度も納得度も大きく高まります。
逆に言うと、デメリットを提示しない提案は、どれだけ内容が良くても信頼に値しないものになりえないのです。
デメリットの提示は、もっとも誠実で、もっとも合理的な説得技術
あなたが良い提案を持っているなら、その魅力を正しく伝えるためにも、最初にデメリットを伝えるべきなのです。
これは自分の弱点を強調する行為ではなく、相手の“疑う本能”を先回りし、信頼の基盤をつくるための高度なコミュニケーションです。
メリットが本物であれば、デメリットを先に伝えてもその価値は揺らぎません。
むしろ、デメリットを含めて全体の強さがより明確になります。
それが営業でも企画でも、あなたの提案が選ばれるための最短ルートなのです。





