
こんにちは。
毛利まさるです。
違和感を言語化する
以前の記事で「違和感」というテーマを取り上げました。
あの感覚を意識的に持ち続けることができる人は、次のステージに進む準備ができていると言えます。
というのも、違和感とは「感情と理屈のズレ」を察知するセンサーだからです。
このセンサーを磨いていくと、ディスカッションや会議の中で、言葉の表面ではなく“話の流れ”に違和感を感じ取れるようになります。
「あれ?この人、言っていることは正しいようで筋が通っていないな」と、微妙な不一致を感じ取れるのです。
感情と理屈のズレを見抜く力
人の話には、論理的な部分と感情的な部分が混在しています。
たとえば、「私はこのやり方が正しいと思う」と言いながら、その根拠が「みんなそうしているから」だった場合、それは理屈ではなく感情に近い。
こうしたズレを察知できるようになると、議論の本質が見えてきます。
しかし、そこで「あなたは感情的になっているから理屈が通っていません」と直接言ってしまうとどうなるでしょうか。
間違いなく、空気が凍ります。
バラエティ番組なら笑いに変えられる場面であるものの、現実の職場や会議でそれをやると、ただの挑発になります。
相手は「馬鹿にされた」と感じ、議論どころではなくなってしまうのです。
違和感を伝える“角度”
では、どうすればよいのか。ポイントは「正面から否定しない」ことです。
相手の発言に違和感を覚えたときは、まず一度、受け止める姿勢を見せることです。
「おっしゃる一面は確かにあります。ですので、まず〇〇という点に一度注目してみましょうか?」
このように切り返すと、相手を否定せずに議論の焦点を移すことができます。
相手のプライドを守りながら、冷静に論点を整理できるわけです。
違和感というのは、相手が間違っているというサインではありません。
単に「価値観の重なり方が違う」というだけの話です。
ですから、ぶつけるよりも、寄り添う姿勢が必要になります。
ディスカッションの目的は勝つことではなく、より良い結論を導くことだからです。
違和感は「軸」を確認する機会
議論中に違和感を覚えたとき、それは「自分の考えの軸」を再確認するチャンスでもあります。
なぜこの意見に反応してしまったのか。どこにズレを感じたのか。
こうした内省を繰り返すことで、自分の価値観や判断基準が明確になります。
特にリーダーシップを発揮する立場では、違和感を放置しないことが大切です。
なんとなく納得できないまま進めたプロジェクトは、後で必ずほころびます。
違和感を「気のせい」で片づけるのではなく、言語化してチームと共有する。
それが組織の精度を高める第一歩なのです。
「正論」よりも「納得」を
会議では、理屈の正しさを競う場面が多いものです。
正論を言うことで自分の知識や論理力をアピールしたい気持ちは理解できます。
しかし、相手が「納得していない」状態で議論を進めても、チームは動きません。
違和感を感じる相手に対して「理解させる」のではなく、「納得を一緒に作る」姿勢が必要なのです。
そのためには、「あなたが言っていることのどの部分が自分には引っかかったのか」を、落ち着いた言葉で伝えることです。
違和感を“攻撃の材料”にせず、“整理の道具”に変える。
これが成熟した対話の形です。
違和感を言語化できる人は信頼される
違和感を適切に言語化できる人は、職場で信頼を得やすくなります。
なぜなら、場の空気を壊さずに本質的な問題を指摘できるからです。
感情的にならず、冷静にズレを整えてくれる人は、組織にとって貴重な存在です。
言葉は“刃”にも“橋”にもなる
違和感を感じ取る力は、相手を斬るための刃にも、理解をつなぐ橋にもなります。
どちらに使うかは、あなたの姿勢次第です。
「おっしゃることも一理あります。ですので、まずこの部分から考えてみましょう」
この一言で、議論は対立から協働へと変わります。言葉の選び方ひとつで、空気が変わるのです。





