会社でなぜ理想が実現しないのか?

こんにちは。
毛利まさるです。

「1on1をやれば信頼関係が築ける」という理想論の裏側

会社の研修やマネジメント本では、
「1on1を実施して上司と部下の信頼関係を築きましょう」
というアドバイスがよく登場します。

確かに言葉だけ聞けばもっともらしく、一対一でじっくり向き合えばお互い理解が深まり、良い関係が築けそうにも見えるでしょう。
しかし現実は、その通りにはいきません。

あなたも心当たりがあるのではないでしょうか?

せっかく時間をつくって1on1をしても、対話が深まらない、形式的になる、むしろ気疲れして終わる。
そして会社が期待するような“信頼関係の構築”にはなかなか結びつかないのです。

では、なぜこんな理想と現実のギャップが生まれるのでしょうか。

1on1がうまくいかないのは「心の安全」が存在しないから

結論からいえば、1on1がうまくいかない最大の理由は、
相手に本音を語りたくないという本音が存在するからです。

人は、安心できない相手に本音を出すことはできません。
これは心理学的にも明らかで、
“本音を出すには心の安全が必要”という前提が崩れていれば、
いくら制度だけ整えても対話は深まりません。

たとえば、あなたの上司がいつも他人の悪口を言っているとします。

その上司に自分の悩みや不安を打ち明けたいと思うでしょうか?

本音で話したことがどこかでネタにされるかもしれない。
自分が話した内容が、陰で誰かに広まるかもしれない。

そう考えると、多少聞かれても無難なことだけ言っておこう。
心のどこかでそう感じてしまうのではないでしょうか。

つまり、どれだけ制度を導入しても、話す相手への信頼が低い時点で1on1は機能しないのです。

信頼を壊すのは制度ではなく“普段の態度”

会社は制度を整えることに一生懸命です。
しかし実際には、制度そのものよりも普段の何気ない態度と言葉が信頼を左右します。

人の悪口を言ったり、誰かのミスを笑ったり、裏で評価を変えていたり、
そうした行動の積み重ねは、部下の心に深く刻まれ、
「本音を言ってはいけない相手」という印象を強くしていきます。

逆に、普段から誠実で、ミスにも冷静に向き合い、他人を尊重し、
その人の行動の背景や意図を汲み取ろうとする上司であれば、部下は自然と胸の内を開き始めます。

制度では人の心は動かせません。
人が動くのは、制度の前にある“信頼”です。

人の悪口が信頼を奪う決定的な理由

悪口を言う上司は、一見すると盛り上げ役のように見えるかもしれません。
しかし、実はその瞬間に、周囲の人から静かに・確実に信頼を失っています。

なぜなら、悪口を聞いた部下は、
「自分もどこかで同じように言われているだろう」
と感じるからです。

そうなると、人間関係に“隠れた防御壁”が生まれます。
この壁が生まれた時点で、1on1はただの形骸化したイベントとなり、
信頼関係は築かれるどころか、むしろ遠ざかってしまうのです。

1on1が失敗するのではなく、
信頼が壊れているからこそ1on1が本来の力を発揮できない
これが現実です。

理想が実現しない組織に足りないもの

会社で理想が実現しない理由は、制度や仕組みが未熟だからではありません。
もっと根本的な部分である、“人の本音を語れる環境づくり”が足りていないからです。

信頼は制度では生まれません。
信頼は日々の言葉、態度、反応の積み重ねでしか育たない。
それゆえに、どれだけ会社が立派な制度を導入しても、現場の人間関係が冷え切っているなら、理想は実現しないのです。

だからこそ普段から、日常の挨拶、笑顔、感謝の気持ちを伝えること。
このような基本的なことが大切なのです。