
こんにちは。
毛利まさるです。
羅生門という作品から生まれた心理学用語
あなたは映画『羅生門』を観たことがありますか?
黒澤明監督によるこの作品は、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、
さらには米国アカデミー賞名誉賞にも輝いた日本映画史に残る名作です。
物語はある事件をめぐって進行しますけど、特徴的なのは同じ事件を体験した複数の登場人物がそれぞれ異なる証言をする点です。
つまり「一つの真実」にたどり着けないまま物語が展開されていくのです。
このあまりにも印象的な構造が心理学用語としても取り上げられ、「羅生門効果」という言葉が生まれました。
これは、人が同じ出来事を体験しても立場や価値観によってまったく異なる解釈をしてしまう現象を意味します。
羅生門効果をセールスに置き換えると
では、この羅生門効果をセールスに当てはめるとどうなるでしょうか。
答えはシンプルです。お客さんは一人ひとり異なる価値観や感覚を持っているということです。
こちらが同じサービスを説明しても、相手によって受け取り方が変わるのです。
たとえば「コスト削減」というメリットを強調しても、あるお客さんには響く一方で、
別のお客さんには「品質が落ちるのでは」とネガティブに受け取られるかもしれません。
つまり、セールストークにおいては「正しい情報を伝える」ことだけでなく、「相手がどう受け取るか」を強く意識する必要があるのです。
ズレを認識する重要性
セールスで失敗する典型的なパターンは、自分の価値観を押し付けてしまうことです。
「これが絶対にお得です」「この機能が一番便利です」と力説しても、相手がそこに価値を見いださなければ意味がありません。
大切なのは、相手と自分の間にある「ズレ」を認識することです。
そしてそのズレを少しずつ埋めていくように説明を組み立てる必要があります。
具体的には、相手が何を大切にしているのかを探り、その観点にあわせて自分の商品やサービスをどう説明できるのかを考えることです。
これが羅生門効果をセールスに応用する第一歩となります。
多様な視点を前提にする
羅生門効果が教えてくれるのは、「真実はひとつではない」という現実です。
セールストークにおいても同様で、商品のメリットや特徴は固定的なものではなく、相手によって姿を変えるものだと捉える必要があります。
ある人には「コスト削減」が響き、別の人には「業務効率化」が刺さる。
同じサービスでも相手がどう感じるかは千差万別です。
この前提を忘れてしまうと、自分の言葉が届かないと嘆く結果になります。
説明よりも共感
ここで思い出してほしいのは、人は論理よりも感情で動くという事実です。
もちろん正確なデータや実績を示すことは大切です。
であるものの、最終的にお客さんが意思決定をするのは「この人の話なら信じられる」「自分のことを理解してくれている」と感じたときです。
羅生門効果は単なる心理学用語ではなく、セールストークを考えるうえで「相手は自分とは違う」という大前提を意識させてくれるヒントなのです。
羅生門効果は「同じ出来事でも人によって解釈は異なる」という人間の心理を表す言葉です。
セールスの現場では、この多様性を受け入れることが成功の鍵となります。
お客さん一人ひとりの価値観に合わせて話をすることで、初めて相手に響くセールストークができるのです。
黒澤明監督の『羅生門』が世界に衝撃を与えたように、あなたのトークも「相手の心に響く一言」として記憶されるかもしれません。





