都合のいい期待を捨てる方法

こんにちは。
毛利まさるです。

都合よく解釈しないという営業の基本姿勢

営業でも企画でも、人とのやりとりの中で一番やっかいなのは、相手の言葉ではなく、自分が勝手に上乗せした期待であることが多いです。
「じゃ、考えておくよ」「こちらから連絡するよ」と言われると、こちらとしては前向きな反応に見えてしまいます。
心のどこかで「これはもう決まったも同然だな」「あの人は100%使ってくれる」と思ってしまうのです。

しかし、それは単にこちらが都合のいいイメージをつくって安心しているだけであり、現実とは限りません。
むしろ、その手の言葉は「今は決めない」「優先度は低い」「とりあえず今日は終わりにしたい」
ということを丁寧に言っている場合のほうが多いと考えておいたほうが安全です。

つまり、都合よく解釈しないというのは、自分を責める態度ではなく、次に進むための現実認識のトレーニングなのです。

言葉を真に受けると商談が止まる

なぜ都合よく解釈するとまずいのかというと、その瞬間にこちらの行動が止まるからです。

相手が「連絡するよ」と言ったとします。
ここで「待っていれば連絡がくる」と思ってしまうと、こちらからのフォロー設計がなくなります。
確認メールも送らない、使用イメージも聞かない、導入時期も聞かない。

結果として、せっかく温度があったはずの相手が、日常業務の波に飲まれて忘れてしまうのです。
これは相手が悪いのではなく、こちらが「勝手に完了扱い」してしまったために起きる現象です。

ビジネスの場では、言葉は必ずしも感情の強さや購買意思の強さと一致しません。
だからこそ、言葉の表面だけでなく「で、いつ使いますか」「どんな場面で想定されていますか」と一歩踏み込む必要があるのです。

具体的な利用場面を引き出すことが核心になる

ここであなたの独特のフレーズをそのまま使わせていただきます。

「ありがとうございます。ここで確認ですけど、今現時点でどのような場面で使ってみたいと想定されておりますか?」

この一言こそが、都合のいい解釈を排除する最初の一歩です。
相手が本当に使うつもりがあるなら、部署名やイベント名、患者さんとの面談のタイミング、学会の配布資料など、何かしら具体的なシーンが出てきます。

逆に「そのうち使うかもです」「とりあえず資料だけ」などの抽象的な返答しか出てこない場合は、まだ購入や導入の前提に立っていないということです。
この段階でそれを見抜いておけば、こちらも「では実際に使えそうな場面を一緒に整理しましょう」と次の提案に移れます。

つまり、具体化させる質問をはさむことで、相手の本気度と状況を可視化できるということです。

都合のいい解釈は期待コストを増やすだけ

人は期待した分だけがっかりします。

相手の一言を前向きに受け取りすぎると、実際に連絡が来なかったときに「なぜだろう」「脈があったはずなのに」と余計な感情コストが発生します。
さらに厄介なのは、そうした見込み案件を頭の中で積み上げてしまい、「今月はたぶん大丈夫」と油断してしまうことです。
営業数字が崩れるときは、この「たぶん大丈夫」が積もったときです。

だからこそ、最初から少し厳しめに見積もっておく。
口頭の前向き表現だけでは成立とみなさない。使う場面が明確でないものは保留にしておく。
こうした姿勢が、結果としてあなたを守りますし、行動量を落とさずに済むのです。

質問を恐れないことがプロの態度であるものの

質問をすると「しつこいと思われるのでは」「断られたらどうしよう」と感じる人もいます。

であるものの、そこで怖がって言葉を飲み込むと、相手の本当の状態が永遠にわからないままになります。
プロとしての営業は、相手を追い詰めることではなく、相手の頭の中を具体化してあげることです。

「このツールはどのチームで最初に試されますか」「来月の会議体で共有することはありますか」
「実際に患者さんとお話しする場面ではどのタイミングで見せますか」など、
未来の使用シーンを一緒に描ければ、相手も導入の現実味を感じやすくなります。

つまり、都合よく解釈しないというのは疑い深くなることではなく、相手と同じ未来を見ようとする行為なのです。