
こんにちは。
毛利まさるです。
マジックとセールストークの意外な共通点
あなたはマジックを観たことがありますか?
たとえあったとしても、せいぜい10分やそこらの短い時間ではないでしょうか。
実は私の知人に、繰り返しマジックを披露し続けた人がいます。
その人がある日、観客から受けた印象的な言葉がありました。
「なんか腹立ってきた」
一見すると予想外でショッキングな反応ですが、ここに人の心理が如実に表れているのです。
マジックというのは「不思議」「観客が知らない」という前提の上に成り立つショウです。
種明かしをされないまま、次々と「知らない」を突きつけられると、観客は「驚き」を超えて「自分は無知なのか」と感じてしまうのです。
これは笑顔で楽しんでいたはずの観客を、ふとした瞬間に「不快」に変えてしまう要因になります。
実はこの構造、セールストークにもそのまま当てはまります。
相手を疲れさせるセールストーク
営業において専門的なことを延々と話し続けると、最初は相手も「知らなかった情報だ」と耳を傾けてくれます。
しかし時間が経つにつれ、その感情は「もっと知りたい」ではなく「もう疲れた」に変わっていきます。
さらに悪いことに「自分はこの知識に追いつけていない」という劣等感まで抱かせてしまうのです。
本来、セールストークの目的は相手に「なるほど、役に立つ」と感じてもらうことです。
しかし無意識のうちに「知識の差」を見せつけてしまえば、それは単なる知識マウントになってしまいます。
これでは商品やサービスの魅力どころか、営業担当者そのものへの不信感につながってしまうのです。
自己重要感を満たすことがカギ
ではどうすればよいのでしょうか。答えはシンプルで、相手の自己重要感を大切にすることです。
セールスは知識の披露大会ではなく、相手が「自分は理解できている」「自分の判断が尊重されている」と感じる場でなければなりません。
「この分野はご存知だと思いますが、あえて最新のデータを共有させてください」
「すでに実践されていることに、弊社の商品を組み合わせるとさらに効果が上がります」
こうした前置きや一言があるだけで、相手は「自分が認められている」と感じるのです。
人は誰でも、自分の存在や努力を尊重されたいものです。
マジックが「観客を驚かせる」だけでは成立しないように、セールストークも「相手を持ち上げる」ことによって初めて成立するのです。
マジシャンから学ぶ“間”の取り方
もうひとつ大切なのが、マジックでいう“間”です。
タネを見せないまま連発されるマジックは観客を疲れさせますが、合間に観客とやり取りし、
笑いを挟むことでショウは楽しさに変わります。セールストークでも同じです。
説明を連続して詰め込むのではなく、相手の反応を引き出す“間”を設ける。
質問を投げかけて相手の意見を聞く。
これによって「一方的に説明されている」感覚は消え、会話のキャッチボールが生まれるのです。
営業の名人は、相手の言葉にうなずきながら「おっしゃる通りですね」「その視点は大切ですよね」と返します。
これは単なる相槌ではなく、相手の自己重要感を高めるための“間”の使い方なのです。
マジックを見て「なんか腹立ってきた」と感じる心理は、セールストークでも起こり得る現象です。
専門知識を一方的に話し続けると、相手は「無知である」と感じてしまい、疲労感や反発心を覚えます。
だからこそ大切なのは、相手の自己重要感を尊重し、会話に“間”を挟み、相手を認めながら進めることです。
マジックの世界から学べるのは「不思議を見せること」だけではなく、「人を気持ちよくさせることの大切さ」なのです。





